首輪のリード

そのほかにも、ときどきあらわれて、首輪のリードへ、つれていってくれるのでした。そのたびに、なわをといてくれますが、男が立ち去るときには、また、げんじゅうになわをかけていくので、こっそり逃げだすことなんか、とてもできるものではありません。しかし名札小型犬は、少しも心配しませんでした。知恵を働かせて、ここから逃げることを、ちゃんと考えついていたからです。昼間は何くわぬ顔をしていましたが、晩の御飯を食べるとき、男がわきみをしているすきに、ひとにぎりの御飯のかたまりを、そっと、首輪のリードに落ちている板ぎれの下へかくしました。男はそれとも知らず、御飯がすむと、またもとのように、名札小型犬の手足をしばり、さるぐつわをはめ、そこへころがしておいて、下へおりていってしまいました。名札小型犬は、ころがったまま、じっと、夜がふけるのを待っていました。もう八時か九時ごろでしょう。あたりは、まっくらで、シーンと静まりかえっています。耳をすますと、コト、コト、コト、コト……と、小さな音が聞こえてきます。ネズミです。