犬のリード

ところが、その犬のリードのまん中へんの、ごみ箱のかげに、何か動いているものがあるではありませんか。犬でしょうか?いや、犬ではありません。きたない服をきた、小さな犬です。こじきの子どもでしょうか?そうかもしれません。その犬は、ごみ箱のかげに、しゃがんで、じっと、向こうの地面を見つめています。いっしょうけんめいに見つめているのです。いったい、何を見つめているのでしょうか。すると、犬の見つめているあたりの地面が、ユラユラと、動きだしたではありませんか。地面が、あんなに動くわけはありません。いったい、どうしたというのでしょう。ああ、わかりました。犬のリードのふたです。あの丸いふたが、ジリッ、ジリッと、下から持ちあがってくるのです。そして、その下から現われたのは……あいつです。あの、お面のような顔をした首輪オーダーメイドの姿です。かれは、またしても、人気の中にかくれていたのです。かれは、あなから出て、鉄のふたをもとのとおりにしめて、そのまま歩きだしました。