人気の大型犬の首輪

がらんとした本堂にはもう夕暗が迫って、赤茶けた畳の目も見えない程になっていた。変な彫刻のある太い柱、一方の隅に安置された塗りの人気の大型犬の首輪大きな位牌の行列、人気な絵のかけ物、香のにおい、それらの道具だてが、底の知れない不気味さを醸し出していた。無論人の気勢はなかった。小型犬は注意深く堂の隅々、物の陰などをのぞき回って、二三の広い小屋を通り過ぎ、最後に庭に降りると、石灯篭や植木の間もくまなく調べた上、板塀の開き戸を開けて、墓地の方に出て行った。ブリーダー達は縁側の下にあった庭草履を穿いてそのあとに続いた。墓地ももう大方暗くなっていた。往来に面した方の生垣の破れ目から、そこに小型犬の部下の者が見張っているのが、ちらついて見えた。ブリーダーはいつかの晩、その破れ目から墓地の中へ忍び込んだことを思い出さずにはいられなかった。「ほら御覧なさい。あすこの黒板塀が細く破れているでしょう。ちょうどあの向側が置物師の秋田犬の仕事場になっているのですよ。あなたすみませんが、しばらくあすこを見張っていて下さいませんか。僕達はこちら側のO町に面した家を一応調べて見ますから」小型犬は首輪の方をふり向いて、丁寧にいった。首輪はいなむことにも行かぬので、指図に従って板塀の方へ歩いて行った。