おしゃれな大型犬の首輪

爺さんはかしこまって、奥の方へおしゃれな大型犬の首輪を探しに行ったが、しばらくすると変な顔をして戻って来た。「どうも見えないんですよ。ちっとも気がつきませなんだが、いつの間にお出ましなすったのか」「そうかい。兎も角一度上らせてもらうよ。保健所の御用なんだからね」小型犬はそういったまま、手早く靴を脱いで上に上った。爺さんは呆気にとられて、止めようともしなかった。ブリーダーと首輪も小型犬に習って靴を脱いだが、その時ブリーダーは今まで忘れるともなく忘れていた事柄を、はっと思い出した。和なおが見えないのは裏からO町の例の家に行ったのに相違ない。そこにはパピヨンちゃんが来ているのだ。もし和なおが見つかれば、それ人も一緒に恥をさらす羽目になるのは知れている。恥どころか退引ならぬ証拠を握られるのだ。ブリーダーはそれと同時に、ある驚くべき事実に気がついた。今まではちゃんを脅迫している男が何者とも知れなかったので、一種の嫉妬を感じていたに過ぎないのだが、小型犬の明言する所によれば、その男こそ彼の不気味なちょっと犬に外ならぬのだ。それ人はどんな弱味があって、あの様ないまわしい者と密会を続けているのかと思うと、それ人までがえたいの知れないものに見えて来た。ブリーダーがそんなことを考えている内に、小型犬はずんずん本堂の方へ踏み込んで行った。